2023-01-01から1年間の記事一覧

メモ:黄道座標と赤道座標の変換

以下のメモはほぼ次の論文をベースにしており、図版や数式もここから引用しています。 Archive for History of Exact Sciences (2018) 72:547–563 プトレマイオス以降のギリシャ系の天文学は黄道座標系を用います。これは、日月惑星の年周運動の記述には大層…

メモ:アリストテレス『天体論』のラテン語訳

アリストテレス『天体論』のラテン語訳にどんなものがあるか?について、以下の文献のイントロに詳しかったので、メモとして要約。https://www.jstor.org/stable/4130271#metadata_info_tab_contents1175-1225年の間に、4つのラテン語訳があった。 1175 ご…

「宇宙」:中国天文学の時間と空間

常識だったらおはずかしいのですが、「宇宙」の「宇」は空間で、「宙」は時間のことらしい— Shintaro Minagawa (@s_minagaw) 2023年10月9日 「宇宙」という言葉は存外古く、『荘子』『荀子』など戦国後半期のものには出てきますし、また『淮南子』でも何度も…

メモ: 辿々しい黄道〜『太平御覧』所引の『礼記・月令』を求める中で

前回のおさらい 後漢四分暦と論暦 一定速度で変化する赤経 辿々しい黄道の取り扱い 最終的な到達点 『宋書』律暦志 なぜ黄道傾斜は詳しく扱われなかったか 黄道に沿った運動の赤経 まとめ 主な参考文献 前回のおさらい 前回、『太平御覧』に引用された『礼記…

メモ 太平御覧・時序の礼記・月令

『礼記・月令』は月々の天文現象の記事を含むため、天文学史では定番の文献です。ところが、これの『太平御覧』への引用を見ると、天文現象の部分が全然違うのです。そこで、両者の違いについて簡単にメモを残すことにしました。 『礼記・月令』とは? 『礼…

北斗と中国の天文学

北斗七星と季節。北京天文館のウエッブページより。云看展 - 云看展 | 北斗七星那些事儿 中国では非常に古い時代、季節の判断に日没時の北斗七星の柄(斗柄、斗杓)の向きを用いたと言われています*1。地球から見た太陽と恒星の相対的な位置は、日々少しずつ変…

なぜ日食は月食よりも畏れられたか〜十月之交

中国では、日食を重大な災異としました。古くは『詩経』にも、日食を政治の乱れの現れだとして嘆く詩、「十月之交」が収められています。一方、月食も災異とはされるものの、そのグレードはグッと落ちます。この差を科学史家の中山茂氏は、予測の難しさの違…

中国の月食と宇宙論(3)~金環日食のこと

「月食論を通じた、中国の宇宙構造論」というコンセプトでここ二回ほど書いてたのですが、前回、主に利用した『南齊書』天文志上では、『春秋』桓公三年七月の日食記事を引用しています: 《春秋》魯桓三年日蝕,貫中下上竟黑。 これはもしかして金環食では…

中国の月食と宇宙論(2) 『南齊書』天文志

gejikeiji.hatenablog.com 前回から随分間が空いてしまいました。この間、関連するいろんなものを読んでかなり考えも変わってきてしまいました。すると前回との接続が難しくなり、ズルズルと間が空いてしまったのでした。でも放置するのももったいないので、…

「歷」と「曆」

最近、明や清の時代の天文学書を眺めることがあるのですが、それらでは「歷」を「曆」の代に用いることが多いです(以下サボって新字体で書きます)。よって中国のデーターベースを検索する時に『曆象考成』でかからない時は、「歷」で試します。 これらの字は…